終わっちゃったなぁ…

悲しい、うん、切ない…。
という事で…ちょっと妄想…。殴

「馬鹿正直じゃ、いけませんか？」彼女は良くそう言った。俺が初めて彼女に会った時もそう言ったし、この前だって言っていた。俺は別に、馬鹿正直が悪いとは思っていない。ただ、馬鹿正直で傷つくのは自分自身だという事に、気付いてほしかった。正直な故に傷ついた時、俺はその苦しみを彼女から取り払う事はできるのだろうか？そう考えるたび、いつも不安だった。

「秋山さん？」
「…どうした？」
「それはこっちの台詞ですよ。どうしたんですか？難しい顔して。」
「あぁ…、」
「本当に、どうしたんですか？」
「……君は、自分が傷つくのと俺が傷つくの、どっちが良い？」
「はい？」

きょとんとする彼女を見て、流石に変な事を聞いてしまったか、と少し後悔する。彼女は頭にはてなマークを浮かべたまま、そうですねぇ、と話し出した。

「やっぱり私、自分が傷つくのは嫌ですよ。」
「まぁ…そりゃそうだな。」
「でも、秋山さんも傷つくのは嫌ですよ。」
「…、」
「だからっ、どっちか一人が傷ついたら、２人で半分こにすれば良いんですよ。」

自信満々に答える彼女。きっと今俺は、ぽかん顔なんだろう。まぁ…彼女の性格を考えれば予想できた答えだったのだが、俺があんなに悩んで居たのに、目の前の彼女はにっこりと軽々しく言った。（いや…別に悪い意味じゃないけど。）
あまりに安易なその考えに、思わずため息が出る。

「秋山さん？」
「もう良いよ、君は…。」
「え、何かおかしいこと言いました？」
「別に…。」

そっけなく返事をする。彼女はそれを、俺が怒っているんだと勘違いしたらしい。秋山さん、あの、ごめんなさい変な事言って…、なんて謝ってきた。笑いそうになりながら、彼女に背を向ける。

「謝る事は無い。」
「でも…、」
「別に怒ったわけでも呆れたわけでもないよ。…いや、呆れられないさ。」
「…？どうして、ですか…？」
「俺は君のそういう考え方、好きだから。…嫌いになんてなれるわけ無い。」
「あ、きやま…さん…、」

吃驚したような彼女の声。俺は笑いながら彼女から離れていく。暫く歩くと、彼女は後ろから走ってきた。

「私もっ！私も、秋山さん大好きですから…！！」
「あぁ、そう。」
「はいっ！」

そう言って、彼女は俺に抱きついてくる。…これは、俺の予想外の行動。

「秋山さん、本当に…大好き、なんですよ。」
「……あぁ、知ってるよ。」

冷静を装いながらも、内心ではどきどきする。彼女は俺の胸にぎゅ、と抱きついたまま、離れようとはしなかった。










だって、君は知らないんだろ？





その一つ一つの行動が、俺を惑わせるには十分だという事に。

（…ここは、抱きしめた方が良いのか…？）（いや、でもな…、）